奈良とお茶の関係は古く、奈良時代にまで遡ります。古い文献を辿れば、お茶によるもてなしは729年に行われた聖武天皇の行茶の儀、栽培は806年に弘法大師から託された茶の種子を植えた佛隆寺の僧侶が最初という説が出てくるほどです。
奈良で育つお茶は大和茶と呼ばれ、生活に根ざした存在として知られます。熱い湯で入れてもおいしい煎茶や、食事はもちろんお茶漬けや茶粥にも合う柳番茶、香ばしいほうじ茶など、歴史を受け継いだ素直で素朴な味が魅力。これでなければ、というお得意さんの多いお茶なのです。
現代のお茶業界は、差別化やブランド化の名目で地域ごとに品種を絞って育てる流れにあります。しかし、健一自然農園では、収穫時期の異なる茶葉や製茶の方法を組み合わせ、10種類以上もある基本の茶葉原料を生産し販売(茶製品としては60種以上!)。お茶本来の原点に立ち返り、その素性を引き出すお茶づくりに楽しみながら取り組んでいます。
そもそも、県内でも土壌や気候などの栽培環境は大きく違います。茶畑がある都祁(つげ)や山添、宇陀(うだ)、田原だけでも、芽吹きの時期や適した品種が変わるのです。そうした気候と品種の関係を、地元の人々のことばに知る時も。田原では煎茶の収穫時期をあえて遅らせてほうじ茶や柳番茶などの番茶にしたり、山添では紅茶をつくると香りがよいものができたり、といった具合です。 伝統の知識や慣習に現代の技術。
伊川さんは、新旧のよいところを組み合わせ、これからの日本茶のひな型を大和茶から創造すべく、励んでおられます。
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